第2部:がん診断 – 早期発見と罹患率・死亡率への影響

2021年9月30日

がんに関する保険記事を4回に分けて紹介するシリーズの第2弾として、今回はがん研究における最もエキサイティングな進歩のひとつであるリキッドバイオプシーの概要について、チーフ・メディカル・オフィサーのアヒム・レーゲナウアー博士の解説をご紹介します。リキッドバイオプシーはがん研究の最も重要な進歩のひとつであり、これまでに特定の末期がんで有望な結果が得られていることから、リキッドバイオプシーによる痛みのない早期診断は、がんの治療と回復に大いなるプラスの影響をもたらす可能性があります。

本コンテンツは簡潔な箇条書きのフォーマットで解説されておりますので、複雑な医学的説明を読み解いたり、センセーショナルな見出しを解釈する必要はありません。

また、アジア太平洋地域の生命保険・医療保険の事業開発責任者であるソヒラ・クワンは、生命保険・医療保険業界が次の10年にも通用するために、これらの変化にどのように対応していけばよいかについて、市場に関する貴重な洞察とソリューションを解説しています。

リキッドバイオプシーとは?

  • がんのスクリーニング、診断、治療に用いられる、主にゲノムベースバイオマーカーの簡易検出を指します。
  • 公にはまだ実現していませんが、簡単な血液検査で細胞・DNA・RNAの断片からがんを検出することが期待されています。
  • これは、ヘルスケア業界に重大な影響を与え、また生命保険会社に広範囲な影響をもたらすでしょう。

何が新しいのか?

がんの診断はこれまで、患部の臓器組織を生検して腫瘍の存在を確認することで行われてきました。この方法は、侵襲的(時には手術が必要)で、痛みを伴います。一方、リキッドバイオプシーは:

  • 簡単な血液検査で早期発見できます
  • 必要に応じて繰り返し行うことができます
  • がんの局在がまだ明確でない場合でも、がんの分子的特徴を完全に把握できます

期待される効果

  • 単一または複数のがんに対する簡単で広範なスクリーニングにより、初期症状が現れるずっと前に、つまり治癒可能である可能性が高い時期にがんを発見することができます。
  • 個人にとってより効果的な治療法を特定するのに役立ちます(すなわち、分子的洞察に基づいた個別化医療)。
  • 治療中の進行がんを定期的にモニタリングし、再発を早期に発見することで、回復の見通しを高めます。
ビジネスソリューション: 顧客とより緊密な関係を築くための取り組み

リキッドバイオプシーは、早期に、痛みを伴わずに、そして簡単にがんのスクリーニングや診断を誰もが受けられる可能性を秘めています。そのため、一般の人々の間で積極的なスクリーニングが行われ、治療結果が改善され、がんのリスクを低減し管理するためにライフスタイルを変更することに対する意識や関心が高まることが期待されています。つまり、保険会社にとってはリスクが変化するだけでなく、被保険者のリスクに対する認識も変化する可能性があるのです。保険会社はそれに応じて、必要なサポートを提供する方法を変えることができます。つまり、保険ソリューションの根本的な変化、すなわち、保険契約の開始時や保険料の支払い時、保険金の請求時だけではなく、顧客のライフ・ジャーニー全体を通してサポートする方向へシフトする必要があります。なお、実はこのシフトは、保険業界ではすでに始まっています。例えば、顧客は重大疾病保険に対して、より早い段階での診断、予防や病気のリスク管理のサポート、保険が最新のがん研究に対応していることへの安心感など、より大きな価値を求めています。保険会社は、主要な保障商品に付随する疾病予防や健康、ウェルネスに関する提案をすでに始めています

生命保険会社への影響

  • 特定のがん、あるいはほとんどのがんの死亡率が改善されます(生命保険や長寿保険に影響)。
  • がんの罹患率や保険の利用率が増加し、見直しが必要となります(重大疾病や医療保険に影響)。過去数十年にわたり、粘膜性乳がんや子宮頸がんの診断件数は、浸潤性乳がんや子宮頸がんの診断件数を3~5倍上回っています[1]。リキッドバイオプシーは、この傾向をさらに強め、過剰診断を招くことになるでしょう。[2]
  • 検診開始後1年間は、部分的に過剰診断が原因で治療費用が増加します。
  • 重大疾病商品について、請求の定義を明確にし、更新するために、新しい診断用語が必要になる可能性があります(現在、重大疾病の請求の70%以上をがんが占めています)。
  • 逆選択の可能性。多くの市場では、例えば、リキッドバイオプシーが遺伝子検査禁止の対象となっているかどうかは明らかではありません。
  • 過去の経験に基づいたプライシングは、このような状況を考慮して見直す必要があります。
ビジネスソリューション: 保険会社にとってのリスクとチャンス

生命保険会社にとって、リキッドバイオプシーの発展はリスクとチャンスの両方を意味します:

  • 重大疾病保険商品(定義、給付設計、プライシングを含む)が、リキッドバイオプシーの登場とそのスクリーニング率、診断、被保険者への実際の影響、それに伴う顧客行動の変化を考慮していないことによるリスクがまず挙げられます。重大疾病保険商品は長期保証(例えば20年以上の)であるため、アジアの多くの保険市場では特に影響が大きいと考えられます。もう一つの潜在的なリスクは、逆選択です。つまり、顧客の検査結果が陰性の場合には重大疾病保険や実損填補型保険を回避または失効し、陽性の場合には保険に加入するというものです。これは顧客にとってもリスクとなります。なぜなら、がんには多くの要因があり、検査はその時点でのスナップショットに過ぎず、後になってがんが発症する可能性もあるからである。
  • 現在の商品設計のギャップを解消し、リキッドバイオプシーなどの進歩が顧客にもたらすメリットを反映した、新しく革新的な重大疾病商品による成長の機会があります。例えば、前述のように、顧客とより密接で支援的な関係を構築することができる商品へのシフトなどです。また、死亡率が改善される可能性があることから、高齢者向けの保障商品を適用していくなどの機会も考えられます。

さらに、リキッドバイオプシーでは、個人情報や健康関連の機密情報を取得する可能性があります。業界がこの情報をどのように要求・使用すべきかについて明確な規制やガイドラインがないため、関連する情報の非対称性やデータプライバシーの問題は、業界がナビゲートしなければならないデリケートなテーマとなっています。

ビジネスソリューション: ビジネスの将来性

 リキッドバイオプシーとその業界への影響は、医療関連商品の未来の競争力の確保(future-proofing)、ひいては保険会社のビジネスの成長と持続可能性の重要性を示す良い例です。

未来の競争力の確保(future-proofing)とは、将来を予測し、将来の出来事による影響、衝撃、ストレスを最小限に抑える方法を開発することです。このことは、重大疾病商品の基本原則や構造が開発以降からほとんど変わることはないが、医療の進歩が顧客の健康や行動と密接に関連していることを考えると、この業界にとっては特に重要なことです。

リキッドバイオプシーやその他の進歩に伴う競争力の確保とは、現在および将来の環境において適切なプライシングを行い、関連性と顧客価値を確保するために商品群を進化させることだけでなく、データプライバシーなどの広範な課題に対応するための効果的なモニタリングおよび変更、リスク管理のフレームワークを導入することや、経験データがほとんどない新しい取り組みのために管理サイクルを充実させることも意味します。

進歩中の最先端技術

  • リキッドバイオプシーは、基礎科学の領域を脱しようとしています。
  • 主に進行性のがんを対象に、リキッドバイオプシーによる治療効果とがんの再発のモニタリング結果を調査し、検証するための数多くの臨床試験が進行中です。複数のがんを対象としたリキッドバイオプシーテスト[3]のひとつの独立した検証試験では、有望な結果が報告されており、このための大規模な集団試験が現在進行中です;PartnerRe Galleri テストのサブスタディに関するサマリー2021をお読みください。
  • 臨床現場におけるはじめてのリキッドバイオプシーは、最近まで一部のがんでしか行われていませんでした。これらは主に研究段階のもので、すべてステージ3~4の進行したがんを対象としています。複数のがんを対象とした検査が臨床現場の主流になるまでには、克服すべき大きな課題があります。
  • 報道はしばしば、複数のがんのスクリーニングテストという見出しで、進歩を歪めてしまうことがあります。例えば、CancerSEEKテストは臨床現場で8つの一般的ながんをスクリーニングできるなど。現在、CancerSEEK、Galleri、PanSeer[4]の各アッセイはまだ開発中であり、Galleri[3], については上述のような有望な結果が得られているものの、日常的に使用するための十分な検証はまだ行われていません。
ビジネスソリューション: 専門家のサポートのもと、冷静に見守り、継続的に取り組んでいきましょう

保険業界において、重大疾病ビジネスの将来性について積極的に取り組むことは重要です。しかし、進化するリスクと経験に見合った対策を講じることも重要です。

変化をモニターしながら、新しい商品や革新的で持続可能なソリューションについてグローバルな経験を持つ専門的な再保険パートナーと協力することで、将来への備えが可能になります。

今後10年の予測

  • がんは関連する疾患の集合体を包括した用語であるため、既存のがん患者に対する臨床応用(再発に対する監視)の進歩は、多くの種類のがんにおいて現実(非常に可能性が高い)となるでしょう。
  • 健康な人を対象とした特定のがんのスクリーニングは実現可能(可能性が高い)でしょう。
  • (すべての/最も一般的な)がんの検査を総合的に実施することも考えられますが、まず多くの課題を克服しなければならないでしょう。
ビジネスソリューション: PartnerReがお手伝いできること

PartnerReは、重大疾病保険が貴社のビジネスと顧客にとって重要であることを認識しています。また、がんの発見や治療、管理方法が進歩している中で、顧客の健康を守るという貴社の目標を支援したいと考えています。これは、経済的な保護から健康増進、病気の予防まで、顧客のヘルス・ジャーニーの早い段階でサービスを提供することも含まれます。

リキッドバイオプシーのような医学研究の進歩について、適切に理解し積極的に管理していれば、それが切実に必要とされるときに、効果的で整合したソリューションと確実性を顧客に提供できる商品や提案を充実させる機会をもたらしてくれます。

私たちは、グローバルな医療専門家と協力して、新しい持続可能な重大疾病商品の文言やデザイン、保険料設定を検討しています。また、がんのリキッドバイオプシーなどの医療の進歩に対応した「将来性」のあるサポートサービスも検討しています。例えば私たちは、給付の定義をがんの重症度に基づく保障文言を採用した革新的な新時代の商品を開発し、がんの保険金をニーズに合わせて手頃な保険料で提供することに成功しました。この商品をさらに進化させるために、皆さまとパートナーシップを組むことができれば幸いです。

私たちはリスクや商品に関する専門知識、キャパシティ、セキュリティ、そして長期的なパートナーシップを背景に、クライアントとの約束を果たすためにクライアントの皆さまをサポートしていきたいと考えています。

私たちは、クライアントのニーズや懸念事項、こころざしに耳を傾け、クライアントとクライアントの顧客のために、リスクを分析し、サポートし、ビジネス機会を実現するためにコラボレーションする価値を信じています。

 

今回の概要がお役に立てれば幸いです。

がん治療に関する本シリーズの次回の記事「第3部:がんの標的治療-個別化医療への道」では、個別化医療におけるはじめての定期的応用例などついてご紹介いたします。

お問合せ先

私どものアプローチは、専門知識の共有ならびにクライアントの成功を創造するというパートナーシップをベースとしています。今後、具体的なソリューションへと繋いでいけるよう、ご意見を頂戴できますと幸いです。

Kenichi Kim, Client Partner, Japan, Life & Health, Asia Pacific

 

筆者

Achim Regenauer, Chief Medical Officer, Life & Health
Sohila Kwan, Head of Business Development, Life & Health, Asia Pacific

 

この記事は、一般的な情報提供、教育、議論のみを目的としています。また、PartnerReまたはその関連会社の企業姿勢、意見、見解の全部または一部を必ずしも反映するものではありません。

Recent Articles

View More
Find a Contact